「胃の萎縮」って、どういう状態?

〜“胃が小さくなる”わけではありません〜

「胃が萎縮していますね」と言われたことはありませんか?

多くの方が、「萎縮」と聞くと“胃が縮んで小さくなる”イメージを持たれます。

でも、実はそれ、ちょっと違うんです。

今回は「胃の萎縮」について、

どうして起こるのか? どんな影響があるのか? 胃がんとどう関係しているのか?

をわかりやすく解説します。

■ 胃の萎縮ってなに?

「胃の萎縮」とは、胃の粘膜が薄くなり、本来の働きが弱くなる状態のことを言います。

食べ物を消化するための胃酸や酵素、粘液などを分泌する**“胃の工場”が壊れてしまっているイメージ**です。

つまり、胃の“サイズ”ではなく、“質(機能)”が低下している状態なんですね。

■ なぜ萎縮が起こるの?

もっとも多い原因は、ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)感染です。

この菌が胃の中に長期間住み着くと、慢性的に炎症を引き起こし、それが長年かけて粘膜を破壊していきます。

その結果、胃の粘膜はうすくなり、胃酸や消化酵素を作る細胞が減ってしまう=萎縮、という状態になります。

■ 萎縮には“グレード”がある

胃の萎縮は「ある/なし」ではなく、軽度から高度まで段階的な評価がされます。

内視鏡検査で確認できるほか、「ABC分類」といって**血液検査(ペプシノゲン値とピロリ抗体)**でもある程度推測することが可能です。

■ なぜ萎縮の評価が必要なの?

それは、胃がんのリスクを評価するためです。

胃の粘膜が萎縮しているということは、ピロリ菌に長く感染していた=発がんのリスクが高まっているサインでもあります。

萎縮が進んだ粘膜は「腸上皮化生」と呼ばれる変化を起こし、さらにがんへと進むことがあるため、

胃の萎縮の程度は、将来の胃がんリスクを知る“地図”のようなものなのです。

■ 萎縮は治るの?

残念ながら、一度進行した萎縮は完全にはもとに戻らないとされています。

ピロリ菌を除菌することで、進行を止めたり、わずかに改善することはありますが、正常な粘膜にまで戻るわけではありません。

そのため、早めにピロリ菌を見つけて除菌することがとても重要なのです。

■ 萎縮したら、なにがいけないの?

胃の萎縮が進むと…

胃酸が出にくくなり、消化不良や胃もたれが起こりやすくなる 食欲低下や体重減少につながることもある そして何より、胃がんの発生リスクが高くなる

ということです。

■ まとめ

「萎縮=胃が小さくなる」ではなく、胃の粘膜が薄くなり、機能が落ちる状態 主な原因はピロリ菌感染 萎縮には段階があり、胃がんリスクの指標になる 萎縮が進む前に、ピロリ菌の検査と除菌が大切 萎縮がある人は、定期的な胃カメラ(内視鏡)での経過観察が必要

「萎縮していると言われたけれど、どうしたらいいのか分からない」

そんなときは、ぜひ一度ご相談ください。

当院では、苦痛の少ない胃カメラ検査と、ピロリ菌の検査・除菌を行っています。

胃の健康を守ることは、将来の自分を守ること。

早めのチェックが、安心につながりますよ。