癌とゴキブリ

医療系のドラマが流行っています

端正な顔立ちの若手イケメンやスタイル抜群の美女が演じる若き天才外科医達は、高度な手術を鮮やかにこなし、手術が終わるやいなやお洒落な服に身を包み高級スポーツカーで颯爽と病院を後にします。

実際は、、、容姿についてはコメントは控えますが、手術後はオペ室隅のホルマリンにまみれた小さな検体整理室で、摘出された検体からリンパ節をとりだし検体をピン留めする通称「芋掘り」を行い、病棟に戻った後もカルテ書き、書類整理、オーダー出しなど山ほどの仕事を終えて帰る頃には疲れ果て電車で帰宅するというのが若手外科医の実際のところです。

私も医療系のドラマを見たことがあります。古くは「白い巨塔」で田宮二郎さん演じる財前五郎を見て外科医にあこがれましたし、最近では「私、失敗しないので」で有名なドクターXなどを楽しく観ています。

こんなドラマの世界の様に天才外科医ならどんな病気でも簡単に治せるとは誰も思っていないでしょうが、その通りでやはり進行した癌はどんな外科医をもってしても助けることは出来ません。

癌という病気をゴキブリに例えて解説してみます

まずマンションを想像してみて下さい。リビング、寝室、子供部屋、書斎などがあるとします。廊下にはいくつものゴキブリホイホイが置いておきます。

赤いのがゴキブリホイホイ(廊下に置いてあります)

人間に置き換えると

部屋にあたるのが各臓器、廊下は血管やリンパ管、ゴキブリホイホイはリンパ節といった感じでしょうか。

仮に書斎を胃とすると、胃癌は書斎に出来たゴキブリの巣のイメージになります。

①まだ数匹の小さい巣なら小アミですくいとれるかもしれません。

小さなゴキブリの巣があります。この程度ならアミですくって除去できます

②しかし小アミですくえないほど大きくなってしまったら、、、ゴキブリを全部取り除くには部屋の一部又は全部ごと取り除いてしまう必要があります

巣が大きくなり、小アミではすくえません。ただ廊下にはまだ1匹も出ていません。

小さなゴキブリの巣を小アミですくうというのが内視鏡治療。巣のできた部屋ごと取っ払ってしまうのが手術というイメージで、同時に部屋の近くのゴキブリホイホイも一緒に撮ってきます。

③書斎にデッカいゴキブリの巣があったので周囲のゴキブリホイホイごと書斎を取っ払った。一緒にとった周りのゴキブリホイホイを開けてみるといくつかにはゴキブリがかかっていたらどうでしょう

ゴキブリは書斎を出て廊下に何匹か出てしまったということで、こんな時はもう廊下のどこにゴキブリが潜んでいるかわかりません。

ゴキブリは部屋から出てゴキブリホイホイに数匹かかっています。こうなると廊下には何匹も出ていることが予想されます

例えば2匹がかかっていたとしても、部屋から2匹だけ出て2匹ともゴキブリホイホイに真っしぐらで入るわけはありません。

2匹かかっていたら、10匹近くのゴキブリが出てこのうち2匹がかかったと考える方が自然です。

④さらに書斎にデッカい巣を作ったゴキブリがリビングにも巣を作っていたら、、、

もう家の中の至るところにゴキブリがいてもおかしくないと思うのが普通です

③はリンパ節転移をした状態です。部屋を一匹でも出ていることが確認された以上、もう廊下のどこに隠れているかわかりません。つまり胃という臓器(部屋)を出て、リンパや血流に入っている(廊下に出ている)ということで例え手術をしたからと言っても根治とはならないわけです。

巣のある部屋と部屋の周囲のゴキブリホイホイを取り除いた後、どこにいるかわからないゴキブリを全滅させるならバルサンをたくでしょう。

バルサンにあたるのは抗癌剤でリンパ節に転移してしまった癌に対しては手術+抗癌剤治療で完治を目指します。

④の書斎に巣を作ったゴキブリがリビングにも巣を作った場合。これは人間で言えば他臓器に転移した状態ですが、この場合無数のゴキブリ(癌)は書斎(胃)を出て廊下(リンパや血流)を通りリビング(肺など)に巣(転移巣)を作っているわけで、すでにその他の部屋や廊下のどこにいてもおかしくありません。巣のある書斎とリビングを切り取ったところで絶対に絶滅出来ないので、バルサンは欠かせません。

『癌のステージ』というのを聞いたことがあると思います。実際はもうちょっと複雑なのであくまでもイメージですが次の様な感じで理解してもらうとよいかと思います。

(ステージ1 )小さなゴキブリの巣

(ステージ2 )大きなゴキブリの巣が出来ているが部屋からは1匹も出ていない

(ステージ3 )ゴキブリの巣のできた部屋にとどまらず、廊下まで出てしまっている

(ステージ4 )巣を作ったゴキブリの一族が他の部屋にも巣を作ってしまった

話しは長くなりましたが癌は早期で治療するに越したことはありません。どんな名医でも例え米倉涼子さん演じるドクターXでも現実遠隔転移した癌を手術だけで根治させることは難しいのです。

胃癌、大腸癌などには誰もなりたくないと思いますが、絶対にならないという保証はありません。やむなくなってしまっても早期発見、早期治療はとても大事です。定期的な内視鏡や検査をすることがいかに大切であるか、、、というお話しでした。