鼠径ヘルニアの日帰り手術 ― 腹腔鏡手術は本当に必要ですか?
鼠径(そけい)ヘルニアの手術について、患者様からよく次のようなご質問をいただきます。
• 「これは開腹手術になるんですか?」
今回は、当院で行っている外側アプローチによる日帰り手術について、よくある誤解や実際の手術内容、麻酔・費用面についてわかりやすくご説明いたします。
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「開腹手術ですか?」という質問について
患者様から「開腹手術になるのですか?」と聞かれることがありますが、実はお腹を開ける(腹腔内に入る)という意味では、腹腔鏡手術の方が“開腹”にあたります。
腹腔鏡手術では、お腹に小さな穴を数か所開けてカメラと手術器具を挿入し、腹膜の内側からヘルニアの穴を修復します。つまり、お腹の中に入って操作を行う方法です。
一方、当院が行っている外側アプローチによる手術では、お腹の中には一切入りません。体の外側から筋肉のすき間を通ってヘルニアの穴にアプローチし、メッシュで補強します。したがって、当院の手術は「開腹」ではありません
手術の方法と創部について
当院の手術では、鼠径部(太ももの付け根あたり)に約4〜5cmの皮膚切開を行います。
痩せ型の女性などでは、3cm前後の切開で対応できることもあります。
切開の位置は恥骨付近から外側に向かってであり、下着で隠れる範囲に収まるため、日常生活で目立つことはほとんどありません。時間が経てば毛も生えてきますので、より自然になります。
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麻酔について
当院では、全身麻酔は行っておりません。
代わりに、内視鏡検査と同様の「鎮静」と「局所麻酔」の併用で手術を行います。
手術中は眠った状態で、意識はなく、痛みを感じることはありません。また、呼吸を止めたり人工呼吸器につないだりする必要がないため、麻酔に伴うリスクを大きく下げることができます。
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なぜ腹腔鏡手術は必ずしも必要ではないと考えるか
もちろん胃、大腸ほか多くの腹部外科の手術では腹腔鏡は大きなメリットがあると思います。
しかし私自身は、鼠径ヘルニアの治療においては腹腔鏡手術は必須ではないと考えています。
その理由は以下の通りです。
1. 外側アプローチでも切開は鼠径部に3〜5cm程度で、下着の中に入る範囲で術後目立ちにくい
2. お腹の中に入らないため、内臓損傷や癒着のリスクが少ない
3. 全身麻酔を使用しないため、呼吸器合併症などのリスクを回避できる(ただし鎮静はかければ寝ている間に終わることは出来る)
4. 術後の回復が早く、入院も不要。日常生活への復帰が早い
5. 費用負担が少なく、身体的・経済的にも無理のない治療が可能
以上の点から、当院では安全性・費用・美容面すべてを考慮したバランスのよい治療法として、外側アプローチを採用しています。
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費用について(保険適用・3割負担の場合)
• 腹腔鏡手術(入院):約17万円
• 腹腔鏡手術(日帰り):約12万円
• 当院の外側アプローチによる日帰り手術:約2万5,000円
当院では全身麻酔を行わないため、麻酔にかかる加算費用は請求しておらず、患者様の負担を大きく抑えることが可能です。
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最後に
鼠径ヘルニアは放置しても自然に治る病気ではありません。
悪化すると腸閉塞などのリスクが生じることもあります。
当院では、丁寧な手術を心がけ診察から手術、術後のフォローまで私が一貫して対応しております。
手術をお考えの方、あるいは「本当に腹腔鏡でないとダメなのか?」と疑問をお持ちの方も、どうぞお気軽にご相談ください。